元WBC世界ライト級チャンピオン ガッツ石松
世界チャンピオンになるまでデビューから8年かかり、芸能界でそれなりにやっていけるまでは6年かかりました。幼いときの苦労があるからこそ現在があると思っています。
子供の頃は貧乏で、現実を受け入れるだけでは望む結果は出ない、ということを日々感じていました。
現実を打開するには、人並み以上のことをやらなくてはならない。アルバイトをやる、近所の農作業を手伝う、そうすると僅かながらでも小遣いがもらえる。自分で現実を打破するのはそれしかない。そういうことを少年期に覚えました。
ボクシング世界で成功を収めた後、第二の人生として芸能界を選びました。
そこで挫折を味わいました。
人生が思うようにいかないのはガキの時分から分かっていましたから、こんなもんだろうなとは思っていましたが。
鼻で笑う人もいました。俺が演技まがいのものをしている、と笑っていました。
ボクシングとはまるで違う世界ですから無理もありません。今から40年ほど前、スポーツの世界から役者になった人はいなかったと思います。でも、人のやっていないことだから面白い。
ボクシングはガキの頃からの殴りっこの延長みたいなものでしたから、違う世界で何かを成し遂げてやろうと、必死で役者を続けました。来る仕事も全て受けました。バラエティー番組でも「どっきりカメラ」でも何でもやりました。
我慢することは今でもあります。挨拶しても無視されるとか‥。ここ芸能界でも、ぶっ飛ばしてやりたい人はいます。しかしそれをやったらおしまい。世の中を渡るには〝グレーゾーン〟でいるのが一番良い、というのが私の考えです。
白黒はっきりさせるのは自分の腹だけにして、相手に対しては「そうだね。」って納得だけしておく。嫌な人とは遭遇しないようにする。それがうまい生き方だと思います。
また、私は何かあったときには風呂に入って体を磨くんです。心身を清めて、何が起きても「待ってました。」と言えるようにする。やはり心と身体は繋がっています。心を清めるのはなかなか難しいですが、身体なら簡単にそうできます。イヤなことがあったとき、不安に駆られて自信がないときなど、身体からキレイにすると、不思議と心が整うというか、冷静に物事を見つめることができるんですね。
〈インタビュー記事より抜粋して編集したものです。〉